2004/12/08 (Wed)
■「A spoon of sugar」の4作目です。殿馬が登場します。(裕季サオリ)
★A spoon of suger 4(2002.1.9登録)
ここは、とある公園。 とある公園といっても、トアール商事が管理している公園ではない。 どこかにある、でもどこかわからない、とある公園である。 その公園の中で、ただボールを握りしめて立ちつくしている少年がいた。 「どうしろっていうんだよ…」 少年は、少しはピッチングに自信があった。 今日先発した試合でも、打者が一巡するまでは次々三振を奪い、 その後もあたり損ねを量産させていたものである。 しかし、彼は負け投手であった。 味方が点を取ってくれなかったわけでもない。 4点もらったのだが、野手陣のエラーでランナーがたまったところを その日数少ないクリーンヒットで失点したイニングが3つあったのである。 試合結果は4:6。自責点ではないが、彼の失点であった。 なのに、責められたのは野手ではなく、自分だったのである。 「リズムが悪いっていわれても…」 「投手のリズムが悪いのは投手の責任づら」 「え、わっ」 少年が振り返ると、そこには野球道具を肩に担ぎ、 一輪車に乗った野球選手がいた。 「あの・・・もしかして、殿馬さんですか?」 もしかしなくても、一輪車に乗って野球道具を担いで 公園に入ってくるのは殿馬ぐらいのものであろう。 「そんなこといわれても、リズムなんてわからないよ」 「わからない、でやめたらそれで終わりづら」 「…どんな練習したらいいかもわからない」 「頭を使って考えるづら」 「考えてもわからないから悩んでるんじゃないか」 「それもそうづら、なら HINTを教えるづら」 「プロ野球選手がアマチュアの指導していいのかな?」 「心配ないづら、甲子園には女子選手は出場できないづら」 「あれ?よく気づいたね、ボクが女の子だってこと」 「見ればわかるづら」 不知火も里中も雲竜も見て全然わからなかったのだが、 殿馬には一目でわかったらしい。 ♪せっせせ〜のよいよいよい♪ 「ねえ殿馬さん、これがなんの練習になるの?」 「無駄話しているとリズムに乗れなくなるづら」 そう、殿馬は野球少女にと”せっせっせ”をやっていたのだ。 「大切なのはいろいろなリズムを体に覚え込ませることづら」 「そういうものなのかなあ?」 「そういうものづら、次はRockin' Rollづら」 二人は延々とこの練習を続けた。 なるほど、確かにこれではプロ野球選手が野球指導をしたことには全然なるまい。 そして、あたりが真っ暗になる頃には、野球少女もAllegro程度の早さには余裕で 追いつけるようになったのである。 「まあ、一日での練習にしては上出来づら。 これからも練習を続けるづら」 「練習するって・・どうやって?」 なるほど、そんな恥ずかしい練習につきあってくれる中学生の 野球部員などまずあるまい。 「かんたんづら、ボールを使ってやるづら」 「あっ」 そう、そんな簡単なことだったのである。 それから数週間後、殿馬の元へ一本のカセットテープが届いた。 それは野球少女からの声の便り。 それともう一つ、彼女とキャッチャーとのキャッチボールの音が添えられていた。 「…まだまだ練習不足づら」 さすがに殿馬は手厳しい。 「それでも上達の跡は見えるづら、このまま成長すればすごい選手になるづら」 殿馬らしい賛辞なのか、それとも厳しい一言なのか? それは殿馬にしかわからない 。
***おしまい***
あとがき: バーター取引(私はイラストが描けない人なので、イラストが必要な時にはSSで バーター取引をするのです)のために書いたA spoon of sugerの殿馬編です。 書いていて思ったけど、やっぱり殿馬って人間じゃないわ。 これぐらいづっこけが似合わないキャラも少ないです。 これが山田みたいに人格者風に描かれたキャラなら壊すことができますけど、 殿馬って普段の態度がずっこけだから壊しようがないし・・・。 さて、次回はどうしよう?掲示板で名前のでてくるキャラを書くのが書きやすいですけどね(笑)。
|